パーキンソン病と痛み

パーキンソン病は運動症状として動きにくさや、筋肉の硬直といった訴えが多くあります。
しかし、それ以外にも生活の質に大きな影響を与える症状があります。その1つが痛みです。

2016年のthe journal Frontiers in Neurologyで掲載されていた論文に”pain affects 40-80% of PD patients at different stages of the disease.” (Broen et al., 2016)「パーキンソン病患者の40~80%は、病気の様々なステージにおいて、痛みの影響を受けることになります。」とあります。
上記の論文だけではなく、その他の痛みについての論文にも、パーキンソン病患者の半数以上の患者が経過中に何らかの形で痛みを経験しているとありました。そしてそのような痛みは以下の①~④のように様々な形で現れるようです。


①筋骨格系の痛み

パーキンソン病による筋固縮や姿勢のゆがみ・動作は筋肉や関節に多大な負荷をかけます。
これが肩、腰、股関節、膝などの筋骨格系の痛みの原因となります。さらに、前傾姿勢や歩行障害は転倒や怪我のリスクを高め、それらも痛みに拍車をかけます。


②ジストニア

ジストニアとは、筋肉の持続的な収縮によって異常な捻れた姿勢をとる状態のことで、足、足の指、脚、体幹に痛みを伴うつっぱり感やけいれんを引き起こします。さらに、患部が捩れたままの無理な姿勢で固定することで痛みが持続します。

③レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)

純粋な痛みというよりは異常感覚による不快感になります。
パーキンソン病患者の半数近くが不快で何かが這うような感覚と足を動かしたくなる欲求を伴うレストレスレッグス症候群に悩まされています。特に夕方から夜にかけて症状が強くなります。


④中枢性疼痛

場合によっては、パーキンソン病による神経変性が脳内の痛覚伝達経路に影響を及ぼし、筋骨格系の問題とは直接関係のない原因不明の痛みが生じることもあります。

このような痛みに対して、病院で行う痛みの治療法としては、パーキンソン病の薬の量の調整、消炎鎮痛剤、筋弛緩剤といった薬での対応、リハビリや鍼灸といった専門的な対応などが行われます。

投薬以外でできることとして以下のように、ご自身で自宅で行える痛み緩和法も多くあります。

1.定期的な運動

運動や歩行などの低負荷有酸素運動、ストレッチを続けることで、可動域が広がり、硬直が和らぎ、筋肉のつっぱりやジストニアも軽減します。運動には痛覚をブロックする気分転換効果もあります。


2.温熱/冷却効果

痛む筋肉や関節にホットパックやアイスノンといった、温熱と冷却を交互に使うと緊張がほぐれ、筋骨格系の不快感が和らぎ効果的です。

3.マッサージ

第三者の手でのマッサージの他に、ストレッチポールやマッサージボールなどを利用すると、血行が良くなり緊張した筋肉がほぐれます。

4.リラクゼーション

深呼吸、瞑想、マインドフルネス(今目の前に意識を集中する)などを実践すると、痛みを増幅させる緊張やストレスを緩和し、心身のリラックス効果が期待できます。

5.正しい姿勢や動き方

パーキンソン病の方は、姿勢反射障害の影響から座っている時や立ち上がった時の姿勢が片寄りがちですが、座っている時の姿勢や立ち上がった時の姿勢が片寄っていても、それが普通になり、「姿勢を直そう」という意識に繋がりにくくなることがあります。偏った姿勢は、痛みを誘発することが多いのです。

人間の頭は大変重く、正しい姿勢で立つこと、座ることは痛みの軽減にもつながります。
正しく動く事でバランスを戻していくことも大切なポイントです。

6.座位姿勢の調整(正しい位置に導くこと)

座っている時も姿勢に意識を向け、クッションやサポーター類で骨盤・脊柱を正しい位置に導くことで、筋肉や関節への負担が軽減されます。また、両腕も重いので、体の前面にぶら下がる形でいると、肩が内側に入り猫背になります。

椅子はひじ掛けのある物に座り、腕の位置に気を付ける、体が沈みこむようなソファーは、骨盤の位置が後屈するので、長時間座らないようにするなど、日常生活の中で骨盤や脊柱の位置を意識して調節することは、非常に大切です。

無理な体勢や動作を避け、こまめに姿勢を変える、動き方を変える、体の位置を意識することで、筋肉の緊張やけが防止にもなります。

このように自宅で気軽に実践できる方法を活用し、パーキンソン病に伴う痛みを和らげることで、全体的な生活の質が大きく改善されるはずです。

参考Youtube コントロールPD

パーキンソン病:痛みを理解する5つのパターン

痛みは冷やす?温める?

ジスキネジアについて

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