今回、進行性のご病気をお持ちで自立度向上を目指してHAL腰タイプをご利用なさっていた方がHALプログラムを無事卒業なさいました。今までのフォローアップ面談で練習の成果など参考になるお話をいただけましたので以下にご紹介したいと思います。
(ご利用者様情報:M様) 年齢:70代 男性
疾患名;球脊髄性筋萎縮症
利用機種:HAL腰タイプ
利用期間:3ヶ月(入院のため2週間の利用中断あり)
利用頻度:週7回(ほぼ毎日)
利用内容:座位前屈、立ち座り、スクワット、歩行、階段昇降
ご利用前のお問い合わせより
球脊髄性筋萎縮症を患っていまして、年に3回ほどN病院に2週間ずつ入院してHAL下肢タイプのリハビリ治療を受けています*。
リハビリ中と退院直後は、すこぶる元気なのですが、2週間を過ぎるあたりから元の状態に戻ってしまいます。
*注:神経筋難病疾患の患者に対して装着型サイボーグHAL®(一般名:生体信号反応式運動機能改善装置)を用いた機能改善・機能再生治療で、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症、シャルコーマリー・トゥース病、筋ジストロフィー、先天性ミオパチー、遠位型ミオパチー、封入体筋炎、HTLV-1関連脊髄症および遺伝性痙性対麻痺の10の指定難病に対して保険診療を用いて機能回復を目的とした治療を行うことが可能です。
【現在の症状と生活の様子】
・階段は手すりを握りながらやっとで登ります。
・杖はつかないでも何とか歩行できますが、物を持っての歩行はきつそう。軽いものしか持てない。
・入浴、排泄、食事など基本的な生活は自力で可能。
・食事は、噛む力が衰えているため、あまり噛む必要がないくらいの柔らかい状態や刻み食です。
・言葉が話しづらく、ろれつが上手にまわらない。話し辛そうですが、会話は通じます。
・どうにか歩きながら、家事や、野菜栽培をするのが日課です。
初日のプログラム中の会話より
家の中の仕事(風呂掃除や料理)はできますが、どこかに寄りかからないと立っていられないです。
外の仕事は寄りかかるところがないので、庭木の剪定ではどこかにつかまるか木に寄りかかりながら行っています。木までは歩いて行けています。草取りはお風呂の椅子を持って行って座りながら行っています。鍬を振るったりはたまに行う程度ですが、ちょっとずつ行えるレベルの体力です。
以上のお話から、全体的な力の弱さと持久力の低さ、バランスの悪さに対して、座った姿勢、立った姿勢のバランスを改善することを目的としたプログラムを1日20回を目安に行ってもらうことを提案しました(体力に余裕があったため2週目以降にプログラムを追加;詳細は下記参照)。
初回に提案したプログラム
座位での前屈 正面、右、左 各20回/日
立ち座り動作 20回/日
2週目以降に追加したプログラム
スクワット 20回/日
歩行 リビング3周
階段昇降 2往復
「自宅でHAL」を行い始めてからの変化について(プログラム中の感想より抜粋)
※個人の感想であり効果を保証するものではありません
初回(HALプログラム後の歩行にて)
「まっすぐ歩けます」
奥様「こんなに(歩き方が)変わるんだ」
1ヶ月後(階段昇降について)
「今まで腕だけで(手すりに)つかまって上がっていたのが、足で上がれるようになりました」
「普段も(HALをつけていない時も)腕を使わずに足だけで上がるように努力しています」
奥様「ペースが速くなっています」
1ヶ月半後(階段昇降について)
奥様「階段はHALをつけていなくても同じように登っていくんですよ」
「本人はエライ(きつい)と言うんですが、見た目はつけてる時でもつけていない時でもそう変わらない」
「使い初めの頃のビデオをとってあって、見比べてみると動作が全然ちがっていてよくなっています」
(歩行について)
奥様「手を振って歩くようになってから体の傾きが小さくなりました」
2ヶ月後(歩行について)
「最近は(HALをつけている時とつけていない時の違いを)感じなくなりました」
奥様「普段の何気ない歩き方が前みたいなエラさ(つらさ)が滲み出ることがなくなってきました」
3ヶ月後(HAL下肢タイプ治療入院後)
「入院した時に(身体機能を)測定してくれたんですけど素晴らしい成果が出まして、前回(入院時)の倍ぐらいのスピードで歩けたんです。」
奥様「入院時に受け入れてくれる方が毎回同じ方なんですけど、その人が一目見た時に『なんか姿勢良くなってますね』って言われました」
ご提供いただいた歩行速度のデータ
歩行速度(10m歩行テスト)
前回入院時(2024.11.18) 9.18秒 退院時(2024.11.29) 4.29秒
今回入院時(2025.2.17) 4.35秒 退院時(2025.2.28)3.87秒
卒業時(3ヶ月半後)の奥様のメールより
「この3ヶ月、ありがとうございました。
出会えてなかったら、どうなってしまったかと思うと、ぞっとしてしまいます。
主人共々、深く感謝申し上げます。
本当にありがとうございました。
(個人的な感想です、今回使わせてもらって感じたこと。)
体幹が無ければ次の歩行には結びついていかないんだと感じ、腰タイプの方が下肢タイプより優先度が高いのではと。」
担当者より
進行性のご病気でしたので、運動のしすぎに注意しながら治療入院の効果をできるだけ持続できる体づくりを目指してご利用いただきましたが、非常に熱心に取り組んでいただいたおかげで歩行や階段昇降などの場面で生活のしやすさが向上してきた印象を受けました。今後もHALを使わずに同様の運動を続けていただくことで定期的な治療入院の効果を維持していただきたいと強く願っています。